Column SORA

   

勝つ意識よりも負けない意識

   

「勝ち続ける」というのは、我々オトナでも大変です。

我々大人のビジネス社会においても、とにかく大変です。

 

次世代を担う子供達には、「勝ち続ける」という意識より、「いつも負けない」という感覚を養ってほしいと願っています。

ちょっとした言葉のニュアンスの違いのように思いますが…気構え方で、その二つは大きな違いを感じています。

 

 

これからの時代だからこそ…

  

彼らは、ボクらも先代も経験したことがない「急激な人口減に伴うマーケット縮小化」という経済環境の中でも、しっかりと成り立つ暮らしを創っていかなければなりません。 

 

だからこそ、「勝ち続ける」よりも「いつも負けない」という感覚のほう大切ではないかと…。

  

コレは、そんなに難しい哲学ではなく、「いつも負けない」という感覚のほうが、何事も細く長く続けられる気がするんですよね…。 

 

継続は力なり…その言葉は、長く続けることに意味がある部分も指摘されたものだとは思いますが、長く「続けられる」ものにしていくためにも、「勝ち続ける」よりも「いつも負けない」意識のほうが良かったりします。

長く続けられると、不思議と「チカラ」の積み重ねが、何かに活きてきます。

 

勝ちに行く「野望」を持ち続けるより、負けない「笑顔」が自然に出ていることのほうが、どこか長く愛されますしね…(=_=)♪

   

 

自分の娘が、小学生時代に大変お世話になったミニバスケの監督の不変の信念とお言葉があります。

 

中学高校と、全国レベルの厳しい世界でバスケをしていた彼女とボクら家族が、何かに大きな壁にぶち当たる都度、奮起させられたことの原点となっている言葉です。

 

心が弱い子は、自分に甘くて、人には優しくなれない。

心が強い子は、必ず人に優しい子となる。

バスケが上手い子より、まず強い心の子供を育みたい。

私の教え子は、ミニバスケを卒業した後も、人を負かすよりも、いつも自分に負けない人に成って欲しい。

 

 

自分オリジナルの成果こそ次につながる財産

 

  

ココで大切なのは、ここで言われている「負け」というのと「失敗」というのは、すこし意味が違うんですね。

 

「失敗」は挑んだ者だけが得られる自分への財産。

 

それを糧にして、また次への工夫やバイタリティーにつなげる。次につなげようとする意識が高いうちは、まだ「負け」ではないのです。

   

会計的に言うと、その意欲こそが、その人だからこそ築けた無形資産であり「文化」です。(この感覚については、また別の機会に…)

企業でも、文化形成(=価値ある無形資産)がしっかりしている所は、不測の事態や不況にも粘り腰があったりします。

 

だからこそ、子供の頃から本来は、小さな失敗の繰り返しはどんどん推奨して、失敗から次につなげる「成果」の中にある「成長」を愉しむ文化をつくりたいんですね…。

 

自分から挑んで得た「失敗」は、自分オリジナルの「成果」なのですから。

世間ではどうも「成果=成功」という意識が強いようですが、「失敗=自分オリジナルの成果」であること…これを大変見落としがちです。

 

しかし、大人の社会でも、「失敗=負けた人」というレッテルを貼ってしまっている風潮…身の回りでも心当たるがあるのではないでしょうか?

「性急な結果」を求めすぎで、「誠実な結実」は蔑ろになりがち…

その大人社会の風潮を、そのまま子供のさまざまな教育文化の中に入り込んでしまっている…その挙句の果てに「有名大学入学・有名企業就職」こそが、勝ち組への道のような流れが、家庭教育の中でも残っている部分は、大いにあると思います。

 

どこに行くかではなく、何をするか…どれだけカネを産むかではなく、どれだけ価値を創れるか…

その本質を見誤る原点は、「失敗=負けた人」だから「勝ち続ける人」を求めがちになります。

 

 

これは、少年スポーツや学校や家庭の教育現場だけでなく、日本経済での人材育成も、価値創造に挑み続けるための「自分オリジナルの成果」を出し続ける重要性…この原点回帰をしっかり見つめ直してもイイと常々想っています。

 

 

我々オトナから変わろう

 

勝ち続ける必要は全くない。しかし…

挑み続ける必要は常にある。

 

たとえ失敗があっても、それは自分オリジナルの成果。

 

そこが大切であり、「自分に足りないものや弱さ」を素直に受け入れられる人は、自分に負けたくない意識が強くなり、しっかりとその課題克服に向き合おうとします。

(この「レーベルに込めた想い」で語っている「強がりと負けず嫌い違い」ですね。)

   

いわゆる自己実現としてビジネスモデルを確立させ、大きな収益を得る成功者もイイでしょう。

 

しかし…

 

これまでの固定観念や、既成概念では通用しない「マーケット縮小」という未曾有の経済環境では…顧客一人ひとりの顔がしっかり見えないままで一過性の「ブーム」で成功をおさめるより…

 

「作り手・売り手」と「買い手」のお互いが生活者という立場を軸に、しっかりと顔と心が見える関係の中で、細く長く愛される価値を認め合う「ムーブメント」は、間違いなく求められている。

 

いや、求められているかどうかの断言は、客観性を欠くので正確ではありませんね。

 

でも、ボクらは少なくとも…「そういうスタイルが好き」ということなんでしょうね。

「勝ち続ける」しんどさよりも、しんどくても「負けない」スタンス…子供の人間形成でも、暮らしを支える商いの場面でも、個人的にはこのスタンスが好きなんです。

 

そのためにも、「勝ち続ける成功者」よりも「挑み続ける成長者」として、価値創造力を高め続ける姿勢…そういう子供達を増やしたければ…まずは私たちオトナの日頃の行動から気を引き締めていかないといけません。

子供達は、必ず私たちの背中を見ています。

 

だからこその…

 

育児というより「育自」

教育というより「共育」

勝ちというより「価値」

 

子供達を変えたければ、まず我々大人の日常の態度から…できるところから変わっていきましょう。

 

 


【追記】

 

この「失敗=自分オリジナルの成果」を奨励する空気や文化を、オトナの職場や学生スポーツの現場でも、どう創っていくことが大切かという「あり方」の話を、「挑戦したくなる空気」というコラムでも綴っています。 

 



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